勤怠管理は何のために行うのか?必要性や方法を改めて考えてみよう

勤怠管理は正しい賃金を支払い、従業員の長時間労働を未然に防ぐためにも大事なことです。これは改めて説明されるまでもなく、皆さん理解されていることでしょう。しかし、本当の意味での『勤怠管理』ができているのか?と問われたとき、あなたは自信をもってイエスと答えられますか?

勤怠管理は何のために行うか

 

何のための勤怠管理?

政府の働き方改革に注目が集まるなか、こんな声があることをご存知ですか?

 

  • 残業をするなと言われるけれど仕事量は変わらず、自宅に仕事を持ち帰ることが増えた…
  • もっと仕事をして成果を上げたいのに、早く帰れと言われる…
  • 部下の勤務状況を細かく確認するようになってから業務の負担が増えた…

 

などなど、働き方改革を実施しているのにも関わらず、従業員の満足度がアップするどころか不満の声が目立つのです。働き方改革に取り組む企業では長時間労働を是正するため勤怠管理に力を入れることが多いのですが、こういった従業員の声を聞くにつけ「勤怠管理は何のために行うのか」を企業の経営者、労務管理担当者は改めて考えなおす必要があるのではないかという気がしてなりません。

 

勤怠管理は、冒頭でも述べたように正しい賃金を支払い、従業員の労働状況を把握・管理するために必要なことです。ただ、これからの時代はそれに加えて勤怠の状況から業務量の調整や働き方の見直しを行い、さらには多様なワークスタイルに対応していくことが求められます

 

つまり、『会社が管理するための勤怠管理』ではなく、『従業員が安心して働ける環境をつくるための勤怠管理』という意味合いが強くなっていくということです。

 

単に「残業を減らせ」、「休みを多くとれ」と強制するのではなく、長時間残業の多い従業員が抱える業務量が適正かどうかを把握することや、本人が私生活よりも仕事に比重をおきたいのか否かの意思確認、勤怠を管理する立場にある中間管理職のサポートを行う体制を整えるなど、従業員に寄り添った根本的な対策が重要と言えます。

 

今後は労働時間を把握する方法の見直しも必要

こうした対応をしていくのであれば、これからは従業員の労働時間を記録し保管するだけではなく、そのデータを活用した働き方の見直しが必要になってきます

 

現状、多くの企業で導入している労働時間の記録方法は大きく分けて次の4種類です。

 

  1. 紙への記入
  2. タイムカードを使った打刻
  3. エクセル出勤簿への入力
  4. デジタル式タイムレコーダーによる打刻

 

基本的に1~3番の場合は手作業で集計する必要があり、その結果をエクセルにまとめて給与を計算することになります。4番のようにデジタル式のタイムレコーダーを使う場合は勤怠管理システムと連動させて使うことが一般的で、特にクラウドタイプのタイムレコーダーは勤怠管理システムとセットになっていることが多いのが特徴です。

 

中小企業の場合、多くの会社がデジタル式のタイムレコーダーのほうが楽なことは知りつつも、未だに1~3番のようなアナログな方法をとっているのが実情ではないでしょうか。これはアナログによる管理が初期費用をかけることなく導入できるというのが大きな要因でしょう。

 

しかし、手作業による集計は時間がかかるため、そのデータを活用して従業員の労働状況を分析するところまでは持って行きにくいところがあります

 

そのため、将来的に従業員が働きやすい環境づくりに力を入れていくのであれば、これまでの勤怠管理の方法から見直していく必要があります。

 

『必要性』ではなく『義務』へ

勤怠管理の方法を見直す必要があるというのは他にも理由があります。これまでも勤怠管理の必要性は唱えられていましたが、実際のところ法令で明確に義務付けられてはいませんでした。しかし、厚生労働省は安全衛生法施行規則の改正に伴い、企業に対して従業員の労働時間を把握することを義務化することを盛り込む方針を固めています

 

労働時間の把握と聞くと、「これまでも管理していたし、うちの会社は大丈夫」と感じる人も多くいるでしょう。しかし、あえて『義務』と明記するのですから、やはりこれまでとは少し様相が変わってきます。

 

改正に伴い、企業は労働時間の把握を『客観的で適切な方法で行わなければならない』としています。つまり、これまでは自己申告制でもよかった勤怠管理が、客観的にも判断できる手法、つまりパソコンの利用時間や、ICカードによる打刻などの記録にシフトせざるをえない可能性をはらんでいるのです

 

システム導入のコスト捻出が難しい、システムをメンテナンスする技術をもった人がいない(雇う余裕がない)といった理由で自己申告制や紙での管理という手法を取っていた企業も、勤怠管理のシステム導入を視野に入れる必要があります。

 

これからは多様性への対応も求められる時代に

過労死などの問題から長時間労働の是正がクローズアップされがちですが、少子高齢化による人手不足もまた、どの業界でも頭を悩ます問題です。自動化できるところは自動化し、マンパワーが必要なところに人員を割く。そういった生産性アップの対策に重点を置く必要があります。

 

ただ、それだけでは解決できないほど人手不足の問題は深刻さを増しているという点からも、今後の人材確保については更に対策を考えていかなければなりません。残業ありきでフルタイム勤務が可能な人材だけを求めていては、いずれ人材が足りないという事態に陥るでしょう。これからの時代は、フルタイム勤務を諦めざるを得なかった主婦層や、定年後も時間を制限しつつ働き続けたいシニア層など、そういった人たちをうまく活用していくことが人材を確保するための肝になります

 

人材不足と言われる現代で企業としての競争力を維持するためには、働き方の多様性に対応するための環境や制度づくりは避けては通れない道です。表面上の長時間労働の是正ではなく、将来を見据えた勤怠管理を改めて考えていきましょう。

 

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